自分の「枠」をはずしてみる

書く冒険への誘い

自分の「枠」をはずしてみる

言葉と私014

あなたにはいろんな人格がありませんか? たとえば、父親としてモノを考えるときと、企業人としてモノを考えるときでは、別のことを考えませんか? 後輩に何かを教えようとするときと、先輩から何かを教わろうとするときで、ものの考え方が変わりませんか? どんな立場にいても、直前の感情に左右されることはありませんか? もしこれらに当てはまるのなら、あなたは複数の感覚を抱えているのではないですか?

これらが認められれば同様に、誰か他人になったつもりになることができるのではないですか?

普段の自分が自分の「枠」です。そこから抜け出て、他人になったつもりで行動することが「枠」から抜け出したことです。だから自分の「枠」をはずすのは、そんなに難しいことではありません。

文章を書くとき、いままではずっと自分という「枠」にとらわれていたはずです。その「枠」を取ったらどんな文章になるでしょうか? このことにトライしてみましょう。

まず、自分のペンネームを考えて下さい。名は体を表すといいます。あなたのペンネームはあなたに多少なりとも影響を与えます。そのことに意識的でいて下さい。どんなペンネームにしますか?

そのペンネームの人物はどんな人ですか? 自分のペンネームとは考えず、そういう名前の人がどう考えて行動するのか考えてみて下さい。

あなたが考えたペンネームの人格が決まったら、その人が書きそうな文章を書いて下さい。これを意識して、いろんなエクササイズをすると、きっといろんなことに気づくでしょう。

一人旅をするのもいいですね。知り合いのいない旅行先では、誰でもない自分になることができます。一人旅をしながら旅行記を書くと、普段では気がつかない自分の考えに出会えるかもしれません。

「枠」を外すという観点から言うと、普段はしない別の枠を用意すれば、普段の枠をはずしたことになるでしょう。たとえば、アメリカで夏におこなわれるバーニングマンと言うイベントがあります。そこでは五万人ほどが集まり、一週間を過ごします。そのときの根本理念は以下の通り。

バーニングマンの10 Principles

 ・どんな者をも受け入れる共同体である。

・与えることを喜びとする。

・商業主義とは決別する。

・他人の力をあてにしない。

・本来のあなたを表現する。

・隣人と協力する。

・法に従い、市民としての責任を果たす。

・証拠は何も残さない。

・積極的に社会に参加する。

・「いま」を全力で生きる。

「ビートニク」を代表する作家の1人、ジャック・ケルアックは「現代散文のための心構えとテクニック」という散文を書くための指針を作りました。

1.書き散らされた秘密のノート、乱雑にタイプで打ったページ、自分の愉しみとして。

2.あらゆることに素直であれ、心を開き、耳を傾けよ。

3.自分の家以外では酔っぱらわないように。

4.人生に恋しよう。

5.感じていることは、いずれカタチを見いだす。

6.クレイジーであれ、愚かな聖者の心で。

7.吹きたいだけ深く吹け。Blow as deep as you want blow.

8.心の底から底抜けに書きたいものだけを書け。

9.話すことでは表現できないひとつひとつのビジョン。

10.正鵠を得れば、詩の出る幕はない。

11.胸の奥で震えている幻想的な痙攣。

12.眼の前にある物体に覆いかぶさる催眠的な偏執夢。

13. 文学的、文法的、構文的なんてものを追っ払え。

14.プルーストのように、時の古茶頭であれ。Like Proust be an old teahead of time.

15.内なるつぶやきで世界の実話を語ること。

16.とびきり面白い宝石は、眼のなかの眼にある。

17.自分自身の記憶と驚きで書くべし。

18.言葉の海で泳ぎながら、力強い真ん中の眼で練り上げろ。

19.失うことを永遠に受け入れよ。

20.いのちの清らかなる輪郭を信じるべし。

21.心にある無垢な流れをスケッチするためにもがけ。

22.止まっている時は言葉のことを考えず、その像をただ見つめなさい。

23.朝に日付を刻みながら毎日を送れ。

24.自分の経験や言葉や知識の気高さを、怖がったり恥ずかしがったりすることはない。

25.克明に描いたものを、世界に見せ、読ませるために書くんだ。

26.”ブックムービー“は言葉の映画、目に見えるアメリカの形。

27.寒々として非人間的な孤独の中の個性を賞賛し。

28.野生的に、野放図に、純粋に、下からくるもので創作すること、狂っていればなお良し。

29.きみはいついかなるときも天才だ。

30.天の加護と援助を受けたこの世の映画の脚本家であり監督。

水木しげるは「幸福の七ヶ条」というものを作りました。

第一条 成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。

第二条 しないではいられないことをし続けなさい。

第三条 他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追及すべし。

第四条 好きの力を信じる。

第五条 才能と収入は別。努力は人を裏切ると心得よ。

第六条 怠け者になりなさい。

第七条 目に見えない世界を信じる。

これらの指針は、あなたの「枠」をはずすのに役立ちそうですか? あなた自身の「枠」のはずし方を自分で見つけて下さい。もとから「枠」なんかないという方は、それで結構です。

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