物語を書く 考察1 どのようにして書けるようになっていくのか
東放学園高等専修学校で教えるようになって今年で6年目だが、この間に学生たちがどのようにして小説を書けるようになっていったかを観察した。多くの学生は以下のようなステップを踏んで小説を書いていく。
1. どのようにして書いていいのかわからない。
2. とにかくやみくもに指示通り書いてみる。
3. ある程度書いて判断する。(書き続けるかやめてしまうのか、この段階で決める人が1/3くらいいる)
4. 反抗。(書けない。書きたくないと言い出す)
5. とにかく書き出す。(しかし、書いてはいるが第三者が読んでもあまり意味がよくわからない)
6. 反抗。(書けない理由をどこかに求める)
7. 自分なりに工夫を始める。
8. 丁寧に書き出す。
9. 小説らしいものになっていく。
以下にそれぞれをもう少し丁寧に説明しよう。以下を読む相手は小説を書くことを教えている先生に向けて書くことにする。たとえあなたが学生として小説や物語を書いていても、それを読んで参考にしてみるといい。
学生がすべてそれぞれの段階を必ず通るわけではない。学生によっては 1.の段階から5. 7. 9.とすんなりと進む人もいるし、ところどころ抜けるがそれぞれを体験しながら前進していく人もいる。
脱落のパターンで一番多いのは3.でやめる人だ。なので、3.の前後にいる学生は少し多めに励ましてあげることが必要になる。もしあなたが小説を書こうとして3.の段階でやめようかと迷っているなら、しばらく休んでまた書き出すのがいいかもしれない。私の授業は選択制なので、やめていく学生はいるが、多くは半年か一年して戻ってくる。新しいことを習うというのはわからないことに直面し続けることだ。たまには息抜きがあってもいいかもしれない。
1. どのように書いていいかわからない。
最初はどのように書いていいのかわからないのが当たり前だ。
最初はStep1に書かれている「1行で書く」ことを考えさせてみる。その際に、ひとりでじっと考えることが好きな人はそれでもいいが、友達と話したり、指導してくれる人と話しているうちにアイデアがでてくるひともいるので、気楽に内容について誰かそのような話をきちんと聞いてくれる人に話すように差し向けるといい。私は授業に余裕があればペアリングさせ(ふたり一組にさせ)、自分が書こうとしている物語について話をさせる。
1行で書く内容がだいたい決まったら、Step2のA4一枚に書いてみる。ここまで来られれば先に進むのはかなり楽になったはずだ。
2. とにかく指示通りやみくもに書いてみる。
概要をA4に書けとか、登場人物の設定をしろとか、はじめてそれをする人にとっては無駄な作業に思えるかもしれない。しかし、それをとにかくやらせてみるのだ。やったあとで気づくことがある。物語は常に書いてしまったことの是認でつながっていく。是認できないと何度も書いては消してを繰り返すことになる。現実と同じで、一度書いてしまったことは是認していかなればならない。もちろん書き直すこともあるが、あまり否定ばかりしていると行く先さえも見失う。はじめに予定していた物語の枠をはみ出すかはみ出さないか、そのすれすれをいければいいことにして書いた方が、面白い物語になっていく。あまり手綱がきつすぎると物語という名の馬は走らなくなる。
3. ある程度書いて判断する。
やみくもに書いてはみたが、やっぱりうまく書けないと思い、脱落する人の多くはここで脱落する。しかし、行きつ戻りつしてうまくなっていくものだ。心理的な壁にぶつかってやめてしまうのはもったいない。その壁は自分で作っていることを知らせよう。指導者は学生にその壁を意識させないように物語のヒントを与えたり、物語を書くことの意義を伝えるとよい。物語を書く意義については後日別項に書く。
4. 反抗
このあたりで反抗する学生がいる。うまくできないのだから反抗したくなるのも当たり前だ。その気分に付き合ってあげよう。あまり深刻に付き合う必要はない。「いつか通る道だね」と言ってあげる程度でもいい場合もある。相手によってどんな言葉が適切か考えてあげることが一番だ。
5. とにかく書き出す。(作品の質はまだ低い)
この段階では、作品を読んであげたあとに適切な質問を与える必要がある。たとえば場面や時間の流れが抜けている場合には「これはどこで起きたことなの?」とか「この話はもしかして過去に戻った?」とかだ。こうして質問することで、学生は何を書くべきだったかを知る。書かれていないすべてのことを指導する必要はない。ある程度質問したら「同じように抜けていることがないかどうか考えてごらん」と言ってしばらく放っておいてあげる。創作において放っておいてあげることはとても大切だ。一週間してもまだよく理解してないようだったら、またいくつかのことを指摘してあげる。これを楽しげに繰り返すのがよい。
6. 反抗。(書けない理由をどこかに求める)
あまり深刻に受けとる必要はない。自分が苦労した話や、悩んだ話をしてあげればいい。その話にどれだけ他人を悪く言っても、最後は自分でやるしかないという教訓がほのかに含まれているといいし、そのことに対して自分が懐かしく感じたり、笑っていたりして深刻に捉えてない様を伝えるといいだろう。ほかにも相手によっていい指導があるだろうから、それはそれぞれ考えて欲しい。
7. 自分なりの工夫を始める。
工夫しだしたことを評価し、さらに丁寧に書くことを勧める。
8. 丁寧に書き出す。
ここまで来れば、あとは学生の書く作品のファンになって上げればいい。そしてところどころわからない部分に関して質問をしてあげる。これを繰り返すことで学生は自然と腕を上げていく。
9. 小説らしいものになってくる。
これから以降は一緒に楽しむだけだ。教師が悩んでいることなどを学生に相談してみるのもいいだろう。教師が学生を高く評価しいることを知れば、学生はさらに高いレベルに駆け上がる。

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